吃音情報シリーズ[保護者向け]

9. ご家庭での対応の提案(小学生版・中高生版)

動画

 

動画の内容

 

 

 吃音の言語症状は、いつも一定ではなく、場面により変わります。どのような場面で言語症状が多い、少ないには、個人差があります。
 
 しかし、一般的には、少し緊張したぐらいが一番吃音の言語症状が少なく、それよりも緊張が少ない、あるいは多いと言語症状が多くなるU字形を示すことが多いようです。緊張が少ないと言語症状が多くなるというのは、意外に思われるかもしれません。これは、恐らく、吃音のあるお子さんにとって、力の入らない楽な繰り返しや引き伸ばしが、リラックスした普段着の話し方であるからだと思います。そのため、吃音のあるお子さんの中には、学校よりもご家庭でより多く吃音が出るというお子さんが少なくありません。「家の方が吃音が多く出るのは、家の環境が良くないからですか」というご質問を受けることがありますが、そうではなく、ご家庭が、話したいことをめいいっぱい話せたり、吃音の心配をしなくて済む安全で安心できたりする場所だから、ということになると思います。
 

 

 また、言語症状を気にし、予期不安や劣等感などの心理症状が大きくなると、言語症状が出そうな音やことばを、他のことばに置き換えたり、話すのをやめたり、話さなくてはいけない場面自体を避けたりするため、言語症状だけに注目すると、「吃音の困難は少ない」、「吃音が軽くなった」と誤解しがちです。
 
 さらに、吃音の心理症状は、様子を見ているだけでは分からず、吃音のあるお子さん本人からの訴えがあったり、お子さんに「困っていることやしんどいことはないか」を尋ねたりしてはじめて明らかになります。
 

 

 これらを踏まえた、吃音のある小学生、中高生に対するご家庭での対応を提案します。
 
 1つ目は、ご家庭を安心して話せる場所にすることです。そのためには、多少言語症状があっても、指摘や修正をせず、お話の中身に注目し、楽しくおしゃべりできる雰囲気を作ることが大切だと思います。吃音のあるお子さんの中には、学校で、言語症状が出ないか不安を感じたり、言語症状が出ないように緊張しながら過ごしたりしているお子さんが少なくありません。そこで、ご家庭は、そのような不安や緊張をせずに、吃っても大丈夫な場所になると良いなと思います。
 
 2つ目は、ご家庭を、吃音の不安や悩みを相談できる場にすることです。そのためには、お子さんが、愚痴や弱音を含む吃音への思いや気持ちをフランクに話せるような雰囲気を作ることが大切だと思います。また、毎日の生活の中で生じる吃音の困難や将来の不安について、お子さんが気軽に相談でき、それをご家族で一緒に考えることができたら、お子さんが一人で吃音の困難を抱え込むことはなくなります。
 

 

 学校や習いごとへの配慮や支援についてですが、私は、大学を含めた学校に通っている間は、ご家族から担任や相談担当の先生などへの働きかけが必要と考えます。これは、通級指導教室に通う、授業や試験で特別な配慮を受けるといった配慮・支援は、申告制となっているため、本人や保護者の側から学校に申し出ないと、原則受けられないからです。
 
 ただし、就職など将来を見据えると、お子さんが、ご家族の手を離れても、自分自身で周囲の人に、理解や配慮・支援を求められるようにする必要もあると思います。私は、そのためには、お子さんが「配慮や支援を受けて良かった」と感じられるような成功経験を積む必要があると考えます。
 

 

 また、将来の「自立」を見据えると、ことばの教室や医療機関などの専門機関、担任の先生や相談室の先生、スクールカウンセラーの先生などの学校の先生、吃音のある中高生の集いのスタッフや自分と同じ吃音のある中高生の参加者など、家族以外の相談できる人や場所を作っておくことや、吃音についての情報をお子さんに提供することも大切です。

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