吃音ってどんなもの?
あなたは、吃音とはどのようなものだと考えますか。ここでは、吃音がどのようなものかを考えていきます。
「吃音=話し方の問題」?
吃音ということばを辞書で引くと、次のように説明されています。
「話しことばを発する時、第一音や途中の音が詰まったり、同じ音を何度も繰り返したり、音を引き伸ばしたりして、流暢に話すことが出来ない状態」 (松村明編, 1999, 大辞林.第2版. 三省堂)
このように、吃音の問題は、「ことばがうまく話せない」問題と、一般的には、考えられています。しかし、私は、吃音の問題は、単に「ことばがうまく話せない」ことだけにあるわけではないと考えています。
私の考える吃音の問題
私は、吃音の問題を次のように考えています。
吃音とは・・・
(1) ことばがどもって
(2) 困ること
「(1) ことばがどもって」とは、以下のような状態をいいます。
音を繰り返す(「ぼ、ぼ、ぼく」)
伸ばす(「ぼーーーく」)
つまって出てこない(「・・・ぼく」)
「(2) 困ること」とは、以下のような状態をいいます。
恥ずかしい思いをする
言いたいことが言えずにいらいらする
周囲からのからかいや特別視
緊張したり、不安になったりする
話すことを避けてしまう
就職や結婚の問題
落ち込んだり、自信がなくなったりする……
私は、吃音の問題の大きさは、主に(2)の状態によって決まると考えています。つまり、仮に(1)の状態がとても多く見られたとしても(2)の問題がない(つまり、吃っていても、困っていないの)のであれば、吃音の問題は大きくはなりません。また、(1)の問題があまり見られなくても(2)の問題が大きい(つまり、あまり吃ってはいないが、吃音のことをとても気にして困っている)のであれば、吃音の問題は大きいということになります。
ウェンデル・ジョンソンの吃音問題の立方体モデル
ウェンデル・ジョンソンというアメリカの研究者は、吃音問題を、立方体の体積で表す試みを行っています。この立方体は、次にあげる3辺の大きさをかけ合わせたものになります(図1)。
X軸 : 吃音の言語症状
Y軸 : Xに対する周囲の反応
Z軸 : XやYに対する吃音がある人本人の反応
図1
このモデルに基づいて吃音問題を考えると、例えば、次のような吃音問題もありうることになります。
例1 : 吃音の言語症状(X軸)はそれほど大きくはないが、周囲の反応(Y軸)が大きいもの(図2)
例2 : 吃音の言語症状(X軸)、周囲の反応(Y軸)はそれほど大きくないが、本人の反応(Z軸)が大きいもの(図3)
例3 : 吃音の言語症状は大きいが、周囲の反応(Y軸)や本人の反応(Z軸)はそれほど大きくないもの(図4)
図2
図3
図4