吃音情報シリーズ[保護者向け]

8. 吃音のあるお子さんへの対応(中高生版)

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動画の内容

 

 

 中高生は、思春期と重なり、心身ともに大きな変化を遂げる時期となります。また、学校や友達関係など、生活の中心が家庭外となると共に、学業などへの要求水準も高くなります。さらに、進路を考えるにあたり、「ちゃんと仕事につけるのだろうか」、「新しい場所に行って、ちゃんとやっていけるのだろうか」など、将来に対する不安が高まることも少なくありません。
 
 また、吃音のある中高生のお子さんの中には、話す場面を言い換えなどで避けるため言語症状が目立たず、さらに、吃音のことを親御さんや親しい友達にも隠しているため、親御さんや先生、友達など周囲からは、吃音があり、悩んでいることが分かりにくいお子さんもいます。
 
 そのため、吃音のある中高生のお子さんの対応では、このような中高生の吃音の特徴に応じた対応が必要です。
 

 

 吃音のある中高生のお子さんの支援では、将来を見据えた対応が必要になります。
 
 そのために、私が必要と思うのは、吃音の理解や、「吃音のあるわたし」の自己理解を通して、お子さんなりに吃音が自分にとってどのような存在なのかを捉えると共に、できるだけ肯定的・建設的な自己理解が図れるようにすることです。また、「吃音のあるわたし」の他者理解として、先生や友達など周囲の人に吃音を理解してもらい、必要に応じて配慮や支援を求められるようにもします。さらに、吃音があっても、人生を楽しく、前向きに過ごそうと思う気持ちを持つことも大切でしょう。
 

 

 私は、吃音のある中高生のお子さんへの対応では、以下の4つのことが必要になると考えます。
 
 1つ目は、「吃音は、悪いこと、ダメなことではない」ことを伝えることです。
 
 2つ目は、「吃音の悩みや相談にきちんと対応する」ことです。学校の相談室の先生や、友達、言語聴覚士など専門職の先生、中高生のつどいで知り合った同じ吃音のある仲間など、親御さん以外にも相談できる人がいることが望ましいでしょう。
 
 3つ目は、周囲の理解と配慮を得ることです。特に、毎日の生活の大半を過ごす学校での不安や困難を軽減・緩和するために、学校の先生にご理解をいただき、必要に応じてご配慮やご支援をいただくと良いでしょう。
 
 4つ目は、ことばの教室や医療機関などの専門機関での指導・支援や吃音のある中高生の集まりへの参加などの検討です。特に、お子さんが、吃音についての相談をしたい、吃音の勉強や話し方の練習をしたい、吃音のある他の中高生にあってみたい、などと思っている時は、これらを検討すると良いでしょう。
 

 

 ご家庭では、
 

  • 相づちやうなづきをしながら、お子さんのお話をよく聞く

 

  • 話し方でなく、話の中身に注目する

 

  • 原則として、吃音の話し方への指摘は避ける

 

  • お子さんが、一人で吃音の悩みを抱え込まないように、定期的に、吃音の不安や悩みがないか尋ねる

 

  • 必要に応じて、吃音の相談や支援についての情報提供をする

 

と良いでしょう。ご家庭での対応については、 吃音情報シリーズ(9)「ご家庭での対応の提案」もご参照下さい。
 
 

 学校や習いごとなどでは、先生に、
 

  • 吃音についてご理解いただいた上で、必要な配慮をしていただく

 

  • お子さんの吃音に配慮した授業や学級作りをしていただく。例えば、授業の発表を黒板に板書する形式にする、探究活動の発表で事前収録した動画の使用を認めてもらうなど、様々な発表方法を取り入れていただく、流暢性だけで発話の巧拙を評価せず、発表の内容や態度、発表までの準備の過程など様々な観点から評価いただくなど。

 

  • お子さんの吃音の悩みや不安にしっかり対応いただく。例えば、必要に応じて、日直当番のセリフを吃音が出にくい言葉に変更するなど特別な配慮をご検討いただく。また、必要に応じて、入学試験の面接試験や英語検定試験のスピーキングにおける特別な配慮を申請するなど。

 

  • 吃音のからかいが生じた際は、しっかりご対応いただく

 
などを、お願いしておくと安心です。
 

 

 中高生の吃音の相談や指導・訓練を行っている専門機関には、公立中学校に設置されている「ことばの教室」、正式名称は、言語障害通級指導教室や、言語聴覚士ということばのリハビリテーションの専門職がいる医療機関があります。ただ、残念ながら、中学校では、「ことばの教室」の設置校はかなり少ないようです。また、都道府県や区市町村などの自治体の中には、「ことばの相談」、「心理相談」などの形で、吃音のあるお子さんの相談を行っているところがあります。さらに、吃音のある人のセルフヘルプグループや吃音のある子どもの親の会などが主催して、「吃音のある中高生のつどい」が全国各地で開催されています。お子さんに吃音が見られる場合は、一度、これらの専門機関などで、相談されることをお勧めします。

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