吃音情報シリーズ[保護者向け]

3. 吃音とは(中高生版)

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動画の内容

 

 

 吃音は、言葉を滑らかに、スラスラと話すことができない言語障害の一つです。言葉が「どもる」とも言います。
 
 吃音の言語症状、どもる話し方には、以下の3つがあります。
 

  • 1つ目は、「こ、こ、これ」のような、音の繰り返し、連発です。

 

  • 2つ目は、「こーーれ」のような、音の引き伸ばし、伸発です。

 

  • 3つ目は、「......これ」のような、音のつまり、難発です。音のつまりは、阻止、ブロックとも言います。

 
 吃音の言語症状が進展すると、「こっ、こっ、これ」、「......これ」のように、のどやくちびる、舌に力が入るようになります。また、言語症状の進展に伴い、顔を歪める、手足を動かすなどの随伴運動が生じることもあります。
 
 なお、中高生のお子さんの中には、これらの言語症状が目立たないお子さんも多くいます。中には、ほとんど言語症状は見られないというお子さんもいます。これは、この後のスライドで説明する心理症状が大きく、吃音になりそうな音や言葉を他の言葉に置き換えたり、話すことをやめてしまっていたりするためと考えられます。そのため、中高生の時期は、吃音の言語症状だけで、吃音の有無や困難度を判断しないようにする必要があります。
 

 

 シーアンというアメリカの吃音の研究者は、吃音の問題は氷山のようなものであり、外から見える言語症状だけでなく、外から見えない心理症状に注意する必要があると述べています。
 
 吃音の心理症状には、
 

  • 言語症状のため、思い通り話せないことへの苛立ちや欲求不満

 

  • 言語症状を、恥ずかしい、いけない・ダメと思う

 

  • 発話の際に言語症状が出ることへの不安

 

  • 言語症状が出そうな音や言葉を他の言葉に言い換えたり、避けたりする

 

  • 言語症状でスラスラ話せなかったり、発話を避けたりする自身を否定的に捉え、自己効力感、自己肯定感が低下する

 
などがあります。
 

 

 小学生以降の吃音の出現頻度は、1パーセント程度であることが知られています。
 
 中高生になると、吃音が自然になくなる自然治癒が見られることは少なくなります。中高生の吃音のあるお子さんは、言語症状が力の入った苦しいつまり中心だったり、自身の吃音を気にし、心理症状が増大していたりする場合が少なくありません。その場合は、ことばの教室での通級指導や、医療機関での言語聴覚療法などの専門的な指導・訓練、吃音の当事者団体や親の会が行なっている吃音のある中高生のつどいへの参加などが有効です。
 
 専門的な指導・訓練やつどいでは、お子さんの吃音の悪化を防ぎ、言語症状や心理症状の緩和・軽減を図るために
 

  • お子さんが一人で吃音の困難を抱え込まないよう吃音の悩みを相談する

 

  • 言語症状になりにくい話し方の練習や、吃音で困る場面の乗り切り方など、吃音への対処法を学ぶ

 

  • 進学、就職などの大きなライフイベントへの対応策を考える

 
などを行います。このような対応をすることで、吃音が、今後、人生の大きな問題になることを防ぐことができます。
 

 

 吃音の原因は、現在、世界中の多くの研究者が精力的に研究を行っていますが、現時点では、まだ、はっきりとしたことは分かっていません。
 
 しかし、これまでの研究の結果、吃音の原因が、保護者の育て方の問題ではないことは明らかになっています。
 
 現在、吃音の原因の有力な説となっているのは、「多要因モデル」と呼ばれるものです。これは、体質的要因と、環境要因の複雑な相互作用によって吃音が生じるとするものです。
 
 なお、中高生の時期の吃音は、不安障害の一つで、人から注目されることに強い不安や恐怖を抱く社交不安障害との合併が多いことも知られています。
 

 

 吃音の出現や進展の要因には、以下の2つが考えられます。
 
 1次性の吃音といわれる、軽い繰り返しや引き伸ばしが生じる要因には、頭の中には話したいことがたくさんあるのに、それを表すための言語表出や発話運動ができない、言語理解と言語表出のアンバランスがあると考えられます。
 
 2次性の吃音といわれる、力の入ったつまりや、言語症状への不安や恐怖が生じる要因には、発話の失敗の積み重ねによる負、つまり、マイナスの、ネガティブな、情動の増大があると考えられます。

関連資料・教材

 

吃音サポートノート [保護者版]

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