吃音情報シリーズ[園・学校の先生向け]

15. 吃音のあるお子さんへの配慮と支援(中高生版)

動画

 

動画の内容

 

 
 一般的に、吃音のあるお子さんは、決まった言葉をタイミングよく言うことが苦手です。そのため、「起立!、礼!、着席!」などの授業の開始と終わりの号令や運動部の部活動のランニングの「ファイト!」などの掛け声、決められた文を読むことが求められる教科書などの輪読、「おはようございます」「さようなら」など表現が決まっているあいさつの言葉、言い換えができない数字での回答などは苦手なお子さんが多いです。
 

 

 また、ほとんどすべての吃音のあるお子さんが経験する困難に、他児から、言語症状を真似されたり、笑われたりするなどのからかいがあります。さらに、他児の中には、どうして自分と違う吃音の話し方をするのかが純粋に不思議で、悪気なく、「どうして、『こ、こ、これ』って言うの」などと質問をする生徒もおり、その質問にどう答えたら良いか悩む吃音のあるお子さんも多いようです。
 
 そして、高校入試や大学入試、就職試験を受験したり、英検などの英語試験を受けたりする吃音のあるお子さんの中には、面接試験やスピーキングの試験など、発話が求められる課題に不安を感じるお子さんが多いです。
 
 そこで、吃音のあるお子さんの配慮や支援を考える際は、まず、お子さん本人や、保護者、お子さんが利用している言語聴覚士などの医療機関の先生に、このような困難の有無や程度を確認する必要があります。
 

 

 吃音のあるお子さんと接する際には、
 

  • 言語症状だけで吃音の問題の大きさを評価しないで、発話への不安や劣等感などの心理症状も考慮する

 

  • ゆっくり、ゆったりと接する

 

  • 授業の発表で、授業の発表を黒板に板書する形式にする、探究活動の発表で事前収録した動画の使用を認めるなど、様々な発表や回答方法を取り入れる

 

  • 流暢性だけで発話の巧拙を評価せず、発表の内容や態度、発表までの準備の過程など様々な観点から評価する。

 

  • 必要に応じて特別な配慮(合理的配慮)を検討する

 

  • からかいに断固たる対応を取る

 
などをします。これらは、学級担任の先生だけでなく、教科担任の先生や部活動顧問の先生など、お子さんに関わる教職員全体で共有するようにします。
 

 

 吃音のあるお子さんの中には、お子さんの吃音の困難に応じ、授業や学級活動で、特別な配慮が必要なお子さんもいます。これを合理的配慮と言います。2024年に施行された改正障害者差別解消法では、私(わたくし)立の学校を含めた全ての学校で、障害のある人に対する「合理的配慮」の提供を求めています。
 
 特別な配慮には、大きく、実施方法の変更、評価基準の変更、免除があります。
 
 実施方法の変更とは、号令の内容や順番を変える、英語のスピーキングテストを別室で先生と1対1で行うなど、課題の実施方法を、お子さんの吃音の困難が軽減・緩和するよう変更することです。
 
 評価基準の変更とは、音読の評価の際、吃音によるつまりを減点しないなど、吃音があることでお子さんの評価が下がらないよう考慮することです。
 
 免除とは、授業中に発表をあてない、音読のテストを免除する、日直当番をあてない、などお子さんが強い困難を感じている授業や学級活動を免除することです。
 
 特別な配慮の実施に際しては、私は、実施方法の変更、評価基準の変更を中心に考え、免除については慎重に扱う必要があると考えます。ただし、吃音のあるお子さんの中には、音読テストや日直当番がある日に、吃音への不安からお腹が痛くなるなどの身体症状が出たり、学校に行けないなどの強い不安を示すお子さんもいます。このような場合は、免除の検討が必要となります。
 

 

 他のお子さんが、吃音をからかったり、「どうして『こ、こ、これ』ってなるの」など吃音への質問があった時の対応については、
 
 まず、吃音のからかいに対しては、学級担任の先生が、「吃音のからかいを許さない」という毅然とした姿勢で学級運営を行います。
 
 その上で、からかわれた吃音のあるお子さんとお話をし、お子さんの不安や困惑、怒りを理解・共感します。
 
 からかいに対する対応には、からかった子どもへ先生から注意する。先生同席で、からかわれた吃音のある子どもとからかった子どもとで話し合いをする。クラス全体に吃音の説明をする などがあります。
 
 また、吃音への疑問については、例えば、「話し方のくせ」、「吃音っていう話し方の問題」などの表現の中からどのような回答をするか、吃音のあるお子さん本人や保護者と話し合ったり、お子さんが利用している言語障害通級指導教室の先生などと相談したりして、誰が(例えば、お子さん自身が、担任の先生が、通級指導担当の先生がなど)、誰に(例えば、質問をした子に説明、クラス全体に説明など)、どのように(例えば、吃音と言う言葉を使わず「話し方のくせ」などと説明、「吃音」と言う言葉を使って説明)対応するかを検討すると良いでしょう。
 
 これらの対応を決める時は、必ず、吃音のある子どもや保護者と十分話し合い、子どもや保護者や想いや希望を踏まえた上で、どのような対応をするか、あるいは、どのような対応はしないかを決めるようにします。
 
 クラス全体への吃音の説明については、吃音情報シリーズ(16)「クラスへの吃音の啓発 」もご参照下さい。

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