吃音情報シリーズ[園・学校の先生向け]

13. 吃音のあるお子さんへの配慮と支援(幼児版)

動画

 

動画の内容

 

 

 吃音のある幼児のお子さんの多くは、まだ、自身の吃音の言語症状に気づいておらず、言語症状が出ても気にせず、おしゃべりをします。言語症状を気にせず話すため、言語症状はかえって目立つかもしれません。
 
 ただし、幼児のお子さんの中には、スラスラとことばが出ないことにもどかしさを示したり、自身の言語症状に気づき、不安や緊張を感じたりする子供もいるので注意する必要があります。
 
 一方、吃音のある幼児の保護者は、我が子の吃音が治らなかったらどうしようと不安になったり、我が子への接し方が悪かったから吃音になったのではないかと感じ苦しくなったりするなど、大きな不安や苦しさを抱えている場合が少なくありません。
 
 そこで、園では、このような吃音のある幼児や保護者の状況を踏まえた対応をする必要があります。
 

 

まず、吃音のある幼児のお子さんへの対応ですが、
 

  • お子さんのお話をよく聞く

 

  • 話し方でなく、話の中身に注目する

 

  • 吃音の言語症状への指摘は避ける

 

  • 「ゆっくり、ゆったり、短め」に接する
  •  
  • 吃音の調子に応じて、話しかけ方を調整する

 
ようにします。

 

 なお、吃音の調子に応じて、話し方を調整する際は、
 
 言語症状の少ない時は、たくさんおしゃべりをして言語表出のアップを狙います。具体的には、「誰と遊んだの」、「何が欲しいの」などオープンな質問をしたり、長い発話や、過去の出来事や道筋だった話など、言語力が必要な発話を引き出すようにします。
 
 それに対して、言語症状が多い時は、あまり話さなくて済むように、「Aちゃんとあそんだの?」、「オレンジジュースとリンゴジュースどっちがいい?」などYes/Noや選択肢で答えるクローズドな質問をしたり、短い発話や挨拶などの決まった言葉や、お子さんが話しやすい音や言葉など、言語症状が出にくい発話を引き出すようにします。
 

 

 また、クラスでの活動や行事への対応については、
 
 基本的には、他児と大きく変える必要はなく、吃音の言語症状が出ていても、お子さんが気にせず、楽しんで取り組んでいればOKとします。なお、お子さんが力の入った苦しい繰り返しやつまりがあったり、発話の際に不安や緊張を感じていたりする場合は、発表のセリフを他のお子さんや先生と一緒に声を合わせて言うなどの対応を、必要に応じて行うと良いでしょう。
 
 また、他のお子さんが、吃音をからかったり、「どうして『こ、こ、これ』ってなるの」など吃音への疑問を示すこともあるでしょう。これらへの対応ですが、「吃音のからかい」については、他児を叩いてしまったお子さんへの対応などと同様に、「一生懸命お話ししているのだから、からかってはいけない」という姿勢で、毅然と対応することが求められます。また、吃音への疑問については、例えば、「話し方のくせ」、「まだ、小さくてお話の練習の途中だから」などの表現の中からどのような回答をするか、吃音のあるお子さんの保護者と相談しながら決めると良いでしょう。
 

 

 最後に保護者への対応ですが、吃音のある保護者の中には、我が子の吃音への大きな不安や苦しさを抱えている方がいます。このことを踏まえ、
 
 まず、吃音の問題を過小評価しないことが大切です。多くの場合、園の先生にとって、吃音の問題は、落ち着きのなさや、対人関係などの問題と比べると、あまり深刻ではないかもしれません。しかし、吃音のあるお子さんの保護者は、園の生活で話せず困っていないか、友達にからかわれたりしていないか、など心配しています。そこで、吃音の問題を過小評価せず、園でのお子さんの様子を保護者の方に知らせるなど、保護者の方の不安の解消を図るようにします。
 
 また、吃音の最新の知識を持つことも大切です。特に、これまでの研究で、「保護者の対応のまずさ」が吃音の原因ではない、ということが明らかになっているにも関わらず、「お子さんの吃音は、保護者の育てた方のせい」とお話しされる先生もおられるようです。また、吃音は、自然治癒が多いのは事実ですが、全ての子どもが自然治癒するわけではないのに、「吃音は、自然に治るから、放っておいて大丈夫」とおっしゃる先生もおられるようです。このようなことがないよう、吃音への最新の知識を持つ必要があります。
 
 さらに、強い不安や苦しさを抱える保護者に対しては、保護者に寄り添い、面談などでじっくりとお話を聞いたり、地域の専門機関を紹介したりする必要があるでしょう。

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