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吃音改善の取り組み

 

吃音改善の取り組み

吃音の原因が不明なことや、吃音がある人同士の個人差が大きいこともあり、全ての吃音がある人に有効な方法は、まだ確立されていません。しかし、これまで、多種多様の吃音の改善を図るための方法が提唱されており、これらを組み合わせることで、吃音の言語症状や、吃音への不安や緊張等の心理的問題の軽減、緩和を図れる場合があることが知られています。

 
これらの方法には、以下のようなものがあります。
 

周囲への働きかけ

吃音をご家庭や学校、職場等の身近にいる周囲の人が理解し、適切な対応をしてくれることで、吃音の不安や緊張が軽減し、話しやすくなることが期待できます。また、学校や職場などで、どうしても話せない言葉や場面がある際に、そのことを周囲の人に理解し、代替策などを相談することが出来れば、吃音の困難が大きく軽減するのではないかと思います。
 
2016年4月1日に「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」という法律が施行され、「不当な差別的取り扱いの禁止」(国・都道府県・市町村などの役所や、会社やお店などの事業者(国や事業者)が、正当な理由なくして、吃音を含む障害を理由として差別することを禁止する)、「合理的配慮の提供」(国や事業者は、吃音を含む障害の困難を取り除くための対応の申し出があった際に、負担が重すぎない範囲で対応に努めること)が決められました。
 
「合理的配慮の提供」については、例えば、学生さんが学校での授業等での配慮を求めるという場合は、比較的考慮してもらえるのではないかと思います。しかし、社会人の方が職場に対して配慮を求めるという場合は、例えば「電話対応が辛いのは、よく分かったし、何とかしてあげたいが、電話対応が主な業務の職場で、電話対応の配慮は難しい」というように、職場の方が吃音のことを理解してくれたとしても、適切な対応や代替策の検討については、対応が難しい場合もあるかもしれません。
 

自身への働きかけ

自身への働きかけとして、まず、大切なのは、吃音や吃音の改善を図る方法について知識を得ることです。これらを得る方法としては、書籍や講演会、ホームページなどの情報が考えられます(「吃音ポータルサイト」も是非、ご活用下さい)。また、吃音のある人のセルフヘルプ・グループなどに参加し、他の吃音のある人の体験談をお話したり、情報交換などをしたりすることも、有効な方法です。
 
また、言語聴覚士等の専門家が行っている言語療法等の専門的な支援も、吃音の軽減や緩和に有効な場合があります。これらの専門施設では、吃音のある方それぞれの吃音のタイプに合わせて、以下にあげるような支援方法や練習プログラムを受けることができます。
 

流暢性形成法(どもることなく流暢に話すことを目指す)
吃音変容法(つまる苦しい吃音からの解放を目指す)
認知行動療法(吃音に伴う恐怖や否定的な感情の緩和を目指す) 

 

吃音改善についての提案

 以上、吃音改善の取り組みについて解説しました。最後に、まとめとして、吃音改善についての私の考えを述べたいと思います。ご参照いただければ幸いです。
 

実際の発話・コミュニケーション場面の中で話すことが大切

私は、吃音の改善は、「毎日の実生活での発話・コミュニケーションで話す」こと達成されると考えています。病院の指導室などでの発話練習は、吃音の改善にはとても有効で必要なことですが、指導室などでの練習「だけ」を行っていたのでは、なかなか吃音の改善は図られないと思います。指導室などで練習を十分に行いつつ、(多少、不安や緊張はあっても)「えい!」と実生活の中で発話・コミュニケーションしてみることが、大切だと思います。
 

発話の練習(言語面)だけでなく、気持ちに対するアプローチ(心理面)が必要

私は、吃音の話し方が生じる背景には、発話に対する不安や緊張、自信のなさ、自責の念といった否定的な感情が及ぼす影響が大きいと考えています。これらの否定的な感情があると、体の緊張が増大し、それが吃音の話し方が増加する、というように言語面の問題を悪化を招くと考えられます。このような心理面の問題が発話面に与える影響を防ぐには、否定的な感情が増大しないように、心理面に対するアプローチも、行う必要があります。
 

苦手な場面からではなく、得意な場面から取り組んでいくのが効果的

得意な場面から取り組んでいくことのメリットには、以下のようなことが考えられます。まず、第1に、得意ことはあまり嫌にならず楽しく取り組むことができやすいので、取り組みが長続きしやすいと考えられます。第2に、得意なことは、苦手なことに比べて成功体験が得やすいことから、前述した否定的な感情を感じることが少ないと考えられます。第3に、出来ないことからよりも、出来ることからの方がより多くのことが学べる可能性があると考えられます。出来ないことは、通常「どうしたらできるようになるか」もわからない暗中模索の中で、試行錯誤し続ける必要があります。しかし、出来ることは、「どのようにしたらできる」かは既にわかっていることが多いので、あまり試行錯誤なしにスムーズに取り組むことができやすいのです。